朝考夜書

朝は考え、夜は書く。

十字路(あとがき)

この話は記録によると、2012年の1月から7月にわたって書かれた。当時私はTwitter上で文芸サークルを主催していて、この小説もそこに投稿されたもののひとつだった。サイトは月に2回更新され、何日かしてから読書会が開かれ、そこでお互いの感想を言い合った。

サイトは2013年から年に1度の更新になって、2014年が最後になっている。2010年から始めたから、4年続いたことになるが、最後はどんな風に終わったのかまったくおぼえていない。Twitter自体もやらなくなったから、メンバーがどうなったのかもわからない。

私はその後も2年くらい書き続けたが、どこかで行き詰まってやめてしまった。段々と仕事の責任が増え、手が回らなくなってしまったのもある。小説にあるとおり私は元々は仕事を「一生懸命」やる人間を軽蔑していたので、自分に苦笑しているところが今でもある。


少し前に気まぐれでこの小説を読み返したら面白かった。話もほとんど忘れていたから、展開にハラハラした。そのことを仕事場の人に話すと「読ませて」と言うから読んでもらうことにした。もうひとり別の人にも頼んだ。

そうなると小説自体もバージョンアップさせたくなって、かなり手を入れた。とにかくだらだらと冗長だったので3分の1くらいカットした。あと、主人公があまりに頼りないので、何度か助け船を出した。

私は手直しの作業に、信じられないくらい没頭していた。通勤中の電車でどの辺りを走っているのかわからなくなったり、外に出たときに季節が冬に向かっているのか春に向かっているのか判断できなくなった。この一年は仕事がかなりハードだったので、仕事以外のことに夢中になるのは久しぶりで、健全なことに思えた。

おそらく当時もこんな気分で書いていたのだろう。読んでくれる人のことを考え、反応を予想しながら書くのは楽しい。早く書き上げて読んでもらいたかったが、同時にこの作業が終わってしまうのが淋しくて仕方がなかった。